6月のはじめ。実家の庭にある梅の木が、たくさんの実をつけました。それも大ぶりの。
我が家の梅というのはとても気まぐれで(聞くところによれば、どのお家でもそのようですが)、枝葉の間に目をこらしてやっと実を見つけられるような不作の年もあれば、実と実がひしめき合うほどの豊作の年もあるので、毎年花の時期を終えると、今年の具合はいかがかと推し量るのがおきまりになっています。どうやら今年は大変な上機嫌だったようで、竹ザルを何度もいっぱいにする大粒の梅を抱えて、さてこれを何に使おうかと思案し、初めてスパイス入りの梅シロップを仕込むことにしました。

私の祖父母がそうしてきたように、これまで梅干しづくりや梅酒づくりはしてきたけれど、せっかくの生り年にあやかり、少し冒険をしてみることにしたのです。いくつか見比べたレシピを参考に、梅や砂糖の他に、シナモンやクローブ、カルダモンを加えることにしました。

普段は奥に仕舞い込んである大きな瓶が引っ張り出されているのを見つけ、むすめは案の定興味津々。「この瓶は何に使うの?」からはじまり、「どうして木の枝(シナモンスティック)を入れているの?」「これは宝石(氷砂糖)?食べられるの?」と質問の嵐でした。むすめには、いちごジャムが入っていた可愛らしいサイズの瓶を渡して、彼女専用のシロップを仕込んでもらいます。こちらは、氷砂糖と梅だけでできた定番のもの。
時折、氷砂糖がガラスに当たるカランという音を立てながら、真剣な顔つきで瓶をいっぱいにすると、こちらを見てにっこり。「自分だけの」という特別感が嬉しくてたまらないといった様子で、料理のお手伝い中やおままごと中の口癖でもある「おいしくなあれ」という声をかけながら、蓋を締めた瓶を何度も揺らしています。
どうやらこれは今すぐにシロップが完成すると思っていそうだなと気付き、ジュースになるのはしばらく先になることを伝えると、やはり的中。一瞬がっかりしていましたが、仕込んでから数日たっても、その小さな瓶を大事そうに眺めながら、完成の日を心待ちにしています。

私の大きな瓶を見ては「おかあちゃんのは、大きくていいな〜」とつぶやくのも、なんだか微笑ましい。スパイシーなシロップを口にしたむすめはどんな顔をするだろうかと想像しながら「味見に、ちょっと分けてあげるよ」と返しています。
少し余った梅は、小さな器の上で色を移ろわせ、熟しながら、甘い香りを放っています。この香りに包まれながら、飲み頃までを待つこの時間も、梅しごとの好きなところ。今年もきっとジリジリと痛いほどの日差しが照りつけるであろう真夏に、ひとつ楽しみができました。
シロップの出来は、また後日こちらにしたためますので、よろしければまたお越しください。

備忘のために、今年の梅シロップの材料をここに記録しておきます。
〈材料〉
・梅……2kg
・きび砂糖……750g
・氷砂糖……250g
・シナモンスティック……5本
・クローブ……5g
・カルダモン……10g
・保存瓶(我が家は無印良品の果実酒用ビン4Lを使っています)